リーンの翼

無料放送の影響で、ここ数日「リーンの翼」の感想blogがものすごく多い。
意見としては、
 
詰め込み過ぎ。
わかりにくい。
CG凄い or 気持ち悪い or 駄目
力也すげー
主人公エイサップ、陰薄い
とか。
 
わからないではない意見なのだが。
(そもそも小説版「リーンの翼」を知らないとサコミズが
バイストン・ウェルに現れてからの状況はわからないし)。
 
だが、
「現象だけが提示され、状況がわからないという。
それがトミノアニメというものなのだよ!!」
 
まあ、通常は神の視点で状況を眺められるアニメが多くて、
それに慣れている方が、「分からない」とおっしゃるのかもしれない。
それでも、実は映像から最低限の情報は提示されているので、
後はその受け手が、状況を「考える」必要が生じるのが富野手法。
それを考えられるかどうかによって、作品評価もかなり変わってくるのだろう。
 
リュクスが状況をただかき回すだけの役回りなのも、
東京の象徴的建造物である「東京タワー」が
大した主張を持たない朗利らよって切り倒され、
無関係な数万の人々が死に、
なのに当事者の朗利たちが生き残るという現実も。
死んだ人々の魂がバイストン・ウェルの花から生まれかわりゆくのも。
バイストン・ウェルの存在を夢想する事すら。
みる側にその理由を考えて欲しいから、そういう風に描いている。
 
唐突に過去世界を垣間見させ、
たかだか60年前に若者だったサコミズの考え方に
今を生きる私(達)が違和感を感じる様になっていることも含めて。
 
5話以降のサコミズの暴走は、エンターテイメントの姿を借りながら、
監督の想いを巻き散らかしてゆく。
恐らくは反戦を主張しているのではない。
反米はあるが、
それよりも日本人に対する怒りと絶望の方が遙かに大きい。
後を託して散っていったもの達の想いが、報われなかった国の姿。
そんな国を造ってきてしまったという自責の念。
それでもなお、そんな東京をフィクションでさえ、
破壊しきれない憤りと
破壊しきれない、この国の未来に一縷の望みを抱いてしまう儚さに。
だからラストシーンの桜木は、サコミズの魂を鎮めたまえよ。

 
日本の近代史を未勉強の方々へ。
できれば、一度教科書以外の複数の本で歴史の勉強していただける事を
祈ります。